私は二次元orそれとも……?




お名前 鈴木さあや様(宮城県)
年齢 20歳

私はあまり出会い系サイトを利用したことがなかった。正直なところ利用しようと思ったこともなかった。だってやっぱりいきなり見ず知らずの人と出会って恋に落ちるなんてありえないと思っていたし、そもそも周りの友達の目も怖かった。

もし彼氏ができたところで「出会いは?」「きっかけは?」なんて聞かれたところで「出会い系サイト」なんて言ったら引かれるに決まっている。

そんな私が出会い系サイトに手を出したのは母親の一言がきっかけだった。ただその母親の一言を明かす前に私の事をまず知ってほしい。

私の趣味、それはアニメ鑑賞、そしてコスプレ。いわゆるヲタクなのだ。

決して現実を見ていないわけではないけれど、どうも周り曰く理想が高いみたいで彼氏いない歴イコール年齢。でも別に何とも思わなかった。周りだってそんな感じだし、私には二次元の彼氏やダンナならたくさんいたからそれだけで満足できた。見てるだけで癒されたしドキドキしたし何より楽しいしヲタク最高。

でもついにある時母親は私にガチトーンで言った。それは友達とコスプレの話をラインでしながら衣装をパソコンでググっていた時の事。

あるアニメのキャラのウエディング衣装に惹かれて次はこれがいいねって盛り上がっていた真っ最中。
後ろからパソコンの画面を覗き込んできた母の一言。

「そんなのリアルで一生に一度でいいの。そんなので着るんだったらさっさと彼氏見つけてリアルで着てよね」

まあここまでは「はいはい」と流せた。しかし、更に続いたのは。

「これだから。いい加減二十歳なんだしさ、現実見たら? そんなんだから彼氏できないのよ」

よくもまあ平気で娘の心を抉ったものだ。

言わせてもらうけれど彼氏なんて作ろうと思えばいつでも作れる。私だって恋したことがないわけじゃないし、たまたま好きな人には振り向いてもらえなかったけど、別に好きでもない人から告白を受けたことは何回かある。

ただ「何となく」とか「告白されたから」という理由で付き合うのが嫌だったから断り続けただけ。そして今彼氏がいないのは同じ大学の学科に出会いがないから。ただそれだけ。だから私はそれを言い返してやったのだけれど。

「それあんたの思い込みじゃないの?」

見事に鼻でせせら笑われたのだった。そこで私の心に火が付いたのだ。

母を見返してやろうと手始めに合コンを開催しようと思ったのだけれど、まあさっきも話した通り私の周りもみんなヲタクだからそんなものとは無縁なわけで。となれば誰かの紹介とかもないわけで。

そこで手を出したのが出会い系サイトだった。そりゃあもうドキドキだったし怖かった。

なんせ「会えるの会えないの」といきなり迫ってくる人もいれば「お金出すからデートして」なんていきなり言ってくる人もいるし、とにかく「ライン教えて」としつこいくらい言ってくる人もいた。

はっきり言って男性の必死さにむしろ引いてしまった。

でも一人だけ絡んだ人の中に雰囲気の違う、大人な感じの人が混ざっていた。変にライン交換も望まず、すぐ会おうとも言わない。慎重に私の事を知ろうとして、少しずつ自分の事も教えてくれた。

そんな周りと違う雰囲気にどことなく惹かれて私は会ってみてもいいかなって思えた。

まさかネットだけでこんな期待が膨らんで恋ができるかもしれないと思うなんて考えてもみなかった。私の中で広がるスーツの似合う紳士像がときめきを与え、現実を見つめるきっかけをくれたのだった。

ところが。

実際会ってみると27歳独身、職業は飲食店の従業員、身長169センチに細い目はきりりと吊り上がり睨んでいるかのような鋭さ。服のセンスも悪く髪型とかも無造作に短く切りそろえているだけ。ついでに言えば無精髭が不潔。

一瞬にして私の紳士像は粉砕され、二次元一筋になるきっかけになった。

ただ会って見た目が残念だったのではいさようならと言う訳にもいかず、しぶしぶカフェに入り話をすることにした。

入った瞬間の空気は最悪だった。こっちは期待を裏切られて不機嫌だし、相手はコミュニケーションが苦手なのかなかなか話題を振ってくれない。おかげで気まずい沈黙が私たちを包み込んだ。

それでも相手の男性は少しずつ言葉を選びながら話題を提供してきた。とてつもなくつまらない他愛もないことだけれど。

でもその他愛もない話の中にはちゃんと私の事を知ろうとする意思や、自分の事を知ってもらおうとする意思が読み取れた。

次第に相手の表情も緩んできて時折笑顔を見せるようになってきて、話題も弾んで、私自身の機嫌も直って、気が付けばカフェで何時間と話していた。それは時計を見た時「えっ、もう?」と感じるほどに早く、短いものに感じた。

そろそろお開きにしようかとなった時、私は驚くことに自らラインを教えてほしいと口走っていたのだった。

その時彼が「喜んで」と笑ってくれた瞬間、信じられないことに私は恋に落ちた。優しくて相手を思う心を持った彼の笑顔は素敵で、暖かくて、鋭い目つきも穏やかに見えた。

それから数週間後私から告白することになるとはこの時点ではまだ知りもしなかった。そして母親を見返すことができたことも、後々のお楽しみになるのだった。




よく読まれている記事




  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。